株式会社よがんす白竜
広島発、山奥のイタリアンから世界へ。“ここにしかない”魅力を届ける挑戦
「せとなか百貨店」は、三原市の地域産業が生み出した数々のスグレモノが集まっています。その種類はバラエティに富んでおり、自分へのご褒美や手土産に最適なグルメの数々、事業者の職人が丹精込めて作る機能性を重視した寝具や衣類品、家具、美容品、生き物までさまざまな商品を展開しております。
せとなか百貨店では、三原市ならではの商品の魅力や、作り手の想いを発信していきます。ぜひ瀬戸内の楽しさ、面白さ、美味しさに出会ってください。
第15回目にご紹介するのは、よがんす白竜の「薪窯焼きピッツァ」と「YOGANSUの酒」です。
「YOGANSU」は山間の小さな道の駅の再生を夢見た地元の有志が中心となって起ち上げた「道の駅発」ブランド。
本格的な薪窯焼きピッツァをはじめ、地元と本場イタリアの食材を使った本格イタリアンを提供するレストランは、良いとは言えない立地や施設、設備にも関わらず、遠方からの来客が絶えず、週末には長い行列ができる程の人気です。
オーナーの高東浩昭(たかとう ひろあき)さんは、もともと料理人を志していたわけではありませんが、ひょんなきっかけでイタリアンレストランに関わることになりました。試行錯誤の末、道の駅の来客をわずか3年で約10倍に増やすことに成功し、地元の賑わい創出にも貢献しています。
高東さんは、地元産の食材を活かした料理にこだわり、「道の駅」や「YOGANSU」をブランド化して広島から世界へと発信していきたいと考えています。今回は、その思いや背景について伺いました。
地元の食材をふんだんに使用した、こだわりのピッツァとお酒
冷凍薪窯焼きピッツァ
YOGANSU「薪窯焼きピッツァ」は、道の駅「よがんす白竜」が“行列ができる道の駅”として話題になるきっかけとなった看板メニューです。
【産直市場の野菜】
YOGANSUの売り上げNo.1ピッツァ。
農家から直送された鮮度の高い野菜を、3種類以上使用しています。
イタリア産のモッツアレラチーズとトマトソースの相性は最高!
源流の里、三原市大和町の野菜の深い旨味を味わってください。
【だいわレンコン】
すっきりとした味で人気の「大和レンコン」をたっぷりとトッピング。
とろりとしたチーズとサルシッチャ(豚の腸詰)の旨味が引き立ちます。
外はサクッと、中はふんわりした薪窯焼きのピッツァ生地とは最高の組み合わせ。
道の駅一押しのピッツァです。
【みはら神明鶏の燻製】
三原は広島県内随一の鶏肉の生産地で、「みはら神明鶏」は三原のブランド鶏です。
YOGANSUオリジナルの無添加レシピで燻製にしました。
香りと旨味が非常に強い「みはら神明鶏の燻製」と地元の野菜をたっぷりのせた、食べ応えのあるピッツァです。
YOGANSUの酒
「YOGANSUの酒」は、その土地ならではの「テロワール」を味わう特別な一杯です。お酒の名前には、お米が育った田んぼの地番がそのまま使われており、田んぼごとに、その年にできたお米の異なる味わいを楽しめるのが特徴です。
このお酒は、自社で栽培したイタリア米と日本米の交配種「和みリゾット」を磨かずに使用(精米歩合90%)しているため、米本来の甘み、旨味、そしてほのかな苦みが調和した、複雑で奥深い味わいを堪能できます。
華やかな香りと爽やかな酸味が引き立ち、まるでリッチな白ワインを思わせるような洗練されたお酒に仕上がっています。
田んぼの地番がそのまま商品名になっている「YOGANSUの酒」
ナポリと地元の食文化を融合し、“ここにしかないもの”をつくる
高東浩昭さんは三原市本郷町の出身で、幼い頃は家業の農業を手伝っていたものの、当時は自分が将来農業に関わることになるとは考えていませんでした。
東京の大学を卒業後、大手自動車メーカーに就職し、マーケティング業務に従事。当時は経済的な自由を求め、起業への関心はありつつも、会社を辞める勇気は出なかったといいます。
「昇進が起業のきっかけでした。役職が上がるにつれ“このままサラリーマンとして人生を終えるのか”という焦りが出てきたんです。会社での13年間は、社会人としての基礎をしっかり学ばせてもらい、その経験が今の自分を支えてくれています」
退職後、高東さんは実家で米作りを始め、農業での起業を目指しました。しかし、経営知識が不足していることに気付き、合格率がわずか4%といわれる難関国家資格「中小企業診断士」の資格を取得。農業コンサルタントとしての活動を開始します。
コンサルタントとして活動をしていたある日、高東さんは、「道の駅」再生事業の計画書作成を依頼されました。その後、計画書を評価され、依頼主から「駅長に」との声がかかります。40代半ばのことでした。
「最初は計画を立てるだけで、実際の運営は別の人がすると思っていました。週に1、2日通うつもりで副駅長を2人採用したのですが、うまくいかず、『このままでは閉鎖になってしまう』と本腰を入れる決意をしました」
当時の道の駅は来客数が少なく、老朽化した外観も相まって地元の人もほとんど立寄らない「トイレ休憩の場所」だったといいます。
集客のため新しい魅力を作り出す必要があると考えた高東さんは、地元の素材を活用した、“ここでしか味わえないもの”を提供することに挑戦しました。
古い洋館風の駅舎の外観を活かし、きれいな水と空気に育まれる美味しい野菜を使った特別な料理を提供するお店を目指して、本格的なピッツァを焼く薪窯を設置することにしたのです。
「この山奥まで足を運んでいただくには、ピッツァも本格的でなければなりません。ピッツァの元祖であり、本格的なピッツァといえば、ナポリピッツァです。本場ナポリの食文化と地元の新鮮な食材を組み合わせることで、ここだけの新しい味を作り出せると考えました」
こうして誕生した「YOGANSU PIZZA」は、地域食材とナポリピッツァの魅力を融合させ、訪れる人を惹きつける特別な存在となりました。
独学でピッツァの作り方を学ぶ
ピッツァを提供すると決めたものの、高東さんには生地作りの経験も知識も全くありませんでした。忙しい店舗運営の合間を縫って外部で学ぶ余裕もなく、高東さんは独学でピッツァ作りを学び始めます。
当時黎明期だったインターネット動画を繰り返し視聴し、ナポリピッツァの専門書を何度も読込み、練習と試作を積み上げて少しずつ技術を習得していきます。
「ナポリピッツァの世界チャンピオンが配信していた動画や専門書を見て学びました。ナポリピッツァの作り方が一から丁寧に説明されていて、道の駅の営業終了後から深夜まで、繰り返し練習しました。その後その世界チャンピオンの方には、ピッツァの料理セミナーで何度か直接教わる機会を頂きました」
日々の練習と熱心な学びが実を結び、レストランの来客は徐々に増加。創業当初から支えてくれたスタッフの協力もあり、現場で働くメンバーも次第に成長していきました。現在ではアルバイト希望者も口コミで集まるほどで、店舗は活気にあふれています。
ピッツァの生地をつくる高東さん
日常にシンプルなおどろきを提供
高東さんが「YOGANSU」のブランドを立ち上げる際、特にこだわったのはコンセプト作りでした。単なるレストランではなく、同じ価値観のもとで商品やサービスを展開し、顧客に特別な体験を提供しようと考えたのです。
「“おどろき”“よろこび”“くつろぎ”の3つをテーマに掲げ、見たことない感動をシンプルでありのままの形で提供したいと思いました。奇抜なことではなく、自然体で純粋な驚きや喜びを感じてもらえる、そんなブランドにしたかったんです」と高東さん。
「よがんす」とは、広島県三原市周辺で使われていた方言で、「いいですね」という意味です。「白竜」は、道の駅の目の前に広がる白竜湖に由来しており、「よがんす白竜」という駅名は当時の町長が命名したものです。
道の駅の産直市場には、自社農場「YOGANSU FARM」で栽培したイタリア野菜も並んでいます。
「よがんす産直市場は「旬のもの」「地のもの」「レアもの」という3つのテーマを大事にしています。私たちが自ら米や野菜を栽培していることに驚かれる方もいらっしゃいます。
非日常の楽しさや人生の潤いを感じてもらえたら嬉しいですね」と話します。
自社農園で野菜や米を栽培
本場ナポリを超えるような美味しいピッツア
“おどろき”はレストランのメニューにも取り入れられました。
例えば、大和の特産品であるレンコンを使った新しいピッツァメニュー。ナポリピッツァとの組み合わせは一見ミスマッチに思えますが、実際に試してみると驚くほどよく合い、たちまち話題になりました。このユニークな試みに注目したマスメディアからの取材も相次ぐようになったそうです。
こうした新しい挑戦の結果、来客数は3年足らずで約10倍に増加しました。
「お客様に、驚きと感動が伝わったのだと思います。リピート率も非常に高く、“とにかくおいしい”と評価いただいています。いちばん嬉しかったのはナポリ出身の男性に「“地元のナポリのピッツァよりおいしい”と言ってもらえたことですね」と笑う高東さん。
遠方からの来客も増え、広島市内をはじめ、東京や大阪など大都市からも訪れるようになりました。
「山奥の道の駅のレストランなので、最初は期待していなかったと言われることもありますが、最後には“都会の名店よりもおいしかったです”と満足して帰っていただけるのが嬉しいです」
広島から世界への発信
大和町の道の駅周辺は、道の駅よがんす白竜のリニューアル以降、この11年で新しい施設が増えるだけでなく既存の施設もリニューアルが進み、少しづつ若い世代が活躍し始めています。
高東さんは、今後の人口減少を見据え、観光客に加えて働き手も呼び込む施設作りを目指しています。
地域の魅力を広島から世界に発信し、「ここでしか味わえない体験」を提供することで、世界から多くの人に足を運んでもらい、それをお迎えする人にも来てもらいたいと考えているのです。
チャレンジを続ける高東さんに、今後の展望について伺いました。
「まだまだこれからですね。夢はたくさんあるんです。YOGANSUブランドのラインナップをもっと広げて、食を中心に、衣類や住まいに関わる商品など幅広いジャンルに挑戦したいですね。将来的には、生産から販売まで一貫して手がけるのが目標です」
「YOGANSUの酒」もすでに、世界市場へと販路を広げる計画が進行中です。また、次世代のリーダー育成にも意欲を持っています。
「目上の人を敬う姿勢など、日本社会の基本的な考えを伝えていきたいですね。真剣に話せば、若い世代にも響くものがあると思います。諦めずに伝え続けていきたいですね」
これからさらに広がりを見せるYOGANSUブランドは、多くの人々を魅了していくことでしょう。おどろきと感動を体験できるYOGANSUの「薪窯焼きピッツァ」、「YOGANSUの酒」をぜひお試しください!